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2007/03/07 (Wed) 「名探偵の掟」
「そういえばそんな謎もあったな」
「そういう謎って…これが今回の物語のメインなんです。
大河原さんも、もう少し大袈裟に扱ってください」
「そういわれてもな」私は苦笑いした。「この歳になって、
密室密室と騒ぐのも恥ずかしいのだ。君に任せよう。どうせ最後は
君が解決するんだから」
「そんな無責任な」天下一は情けない顔をした。「そりゃあ仕方が
ないから、最後は僕が引き受けます。でもそれまでに盛り上げて
くれないと、僕だってやりにくいじゃないですか」
「その気持ちはわかるが、今どき密室で盛り上がれというのも
酷な話だな」
「文句いわないで下さい。僕が一番辛いんです」
「そんなに辛いか?」
「当たり前です。密室の謎解きなんて…ああ、やりたくない。
またミステリマニアや書評家に馬鹿にされる」
天下一はおいおい泣きだした。
―東野圭吾『名探偵の掟』


推理小説にはいくつもの型や類型があります。ちょっと風変わりな探偵に善良な助手、まぬけな警察、富豪の若き未亡人、密室、ダイイングメッセージ、童謡…。そして、それがいかに不自然であっても、あえて指摘しないのが推理小説の掟。血で書かれたダイイングメッセージのシーンを読んで、「どうしてわざわざ暗号めいたものにするんですかね。犯人の名前をずばり書き残せばいいじゃないですか」なんてツッコミを入れるのは、お行儀がよろしくないことなのです。そういうお行儀のよくないことを、シリーズ探偵である「天下一大五郎」と相棒の「大河原警部」が片っ端からしているのが、『名探偵の掟』。ワンパターンな設定と展開にぶつぶつと文句をいい、ときには読者に卵やトマトを投げられながら謎解きに励むふたりの姿が、おかしくも不憫な短編集です。

読み始めたときには、以前読んだ有栖川有栖『登龍門が多すぎる』のようなユーモア小説なのかとおもいました。ただ笑って、忘れて、それでよいのだと。でも、『名探偵の掟』には、笑いの中に苦さがあります。使い古された安直な型だけで量産されていく推理小説と、それをただ口をあけて噛みもせず呑みこんでいく読者への批判があります。この本は、あなたたち、ほんとうに考えて書いてる?あなたたち、ほんとうに考えて読んでる?と、天下一探偵や大河原警部を通して、問いかけています。

推理小説家として、それなりの覚悟がいることだったのではないかとおもいます。裸の王様を裸だといってしまったら、自分も裸では歩けなくなるから。おそらくはそれを自覚しているから、類型ばかりのこの短編集には、いくつもの類型ではない結末が用意されています。その中で、推理小説の掟の不自然さがくっきりと際立っています。それだけに最後の一篇はほろにが。ふつうの推理小説としても、推理小説へのアンチテーゼとしても読める本です。推理小説についている人物相関図や、館の見取り図、時刻表なんて読んだことないやという方に、特におすすめ。

bayside garage #2

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はなび

Author:はなび
犬、紅茶、写真、美術館、お風呂、本、日本語がだいすき。2006年3月から、EOS Kiss DNと一緒にたのしくお散歩をしています。文章と写真は関係がないことが多いです。写真だけをまとめてご覧になりたい方は、hanabi days on flickrへもどうぞ。

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