2008/07/27 (Sun) 『崖の上のポニョ』
今はニヒリスティックになるのが一番簡単な世の中なんですよ。誰でもそういうものを持ってるしね。それが実に浅かろうが深かろうが―多分大抵浅いだろうと思うんですけどね―そのニヒリスティックになったり、ヤケクソになったり、刹那的になるってことを、今、僕は少しも肯定したくないんですよ。たとえそれがどんなに自分の中にあってもね、それで映画を作りたいとは思わないんです。それは自分に対する敗北ですよ。自分の日常生活がどれほどバカげてて、もし自分の車に機関砲がついてたら周り中を撃ちまくりながら走ってるだろうと思っても。それをただ放出するためだけに作品を作るんじゃないんじゃないかと思います。…僕は描きたいものを描きたいですよ。そう思いませんか?
―養老孟司/宮崎 駿 『虫眼とアニ眼』
『崖の上のポニョ』を観に行きました。まだ観ていない方のために詳しいレビューは書きませんが、日本のどこかで起こったできごとのような、絵本の中のものがたりのような、ふしぎな現実感と非現実感のあるお話でした。
それを支えているのは、おそらく”絵”のたしかさ。精霊のような生き物や古代期のお魚のいる景色は明らかにファンタジーなのに、軽自動車でスピードを出したときにふわっと浮くあの感じとか、ポニョが走るときの体重の軽さ、ラーメンの熱さ、そういう五感での感覚が、とてもリアルに伝わってくるのです。ピクサーの疾走シーンも映画的な爽快感があってすきなのですが、風や重力をデフォルメしながら自然に描くジブリの技はほんとうにすごい。
自然にやさしいジブリ、現代社会に鋭く問題提起をするジブリ、生と死と愛の本質を語るジブリ、みたいにテーマやメッセージ性を求めるひとには「ジブリらしくなく」見えるのかもしれないけれど、「自然保護」がファッションになり、批判=鋭い意見、繊細な感性だと思い込んでいるひとが多い世界では、もっともらしいことを声を大にして語るよりも、かわいいお魚と男の子の恋をビジネスとして成り立つ娯楽映画にするほうが大変なのではないかとおもいます。
きらい、と言い続けるより、それでもすき、といい続けるほうが、つらいことも多いかもしれないけれど、きっとたのしい。私のことばや写真たちも、それでもすき、と伝えられるものだといいな。写真は1年前くらいのものに撮ったものですが、金魚さん。(暑くて外に出ないのでネタ切れ中)

―養老孟司/宮崎 駿 『虫眼とアニ眼』
『崖の上のポニョ』を観に行きました。まだ観ていない方のために詳しいレビューは書きませんが、日本のどこかで起こったできごとのような、絵本の中のものがたりのような、ふしぎな現実感と非現実感のあるお話でした。
それを支えているのは、おそらく”絵”のたしかさ。精霊のような生き物や古代期のお魚のいる景色は明らかにファンタジーなのに、軽自動車でスピードを出したときにふわっと浮くあの感じとか、ポニョが走るときの体重の軽さ、ラーメンの熱さ、そういう五感での感覚が、とてもリアルに伝わってくるのです。ピクサーの疾走シーンも映画的な爽快感があってすきなのですが、風や重力をデフォルメしながら自然に描くジブリの技はほんとうにすごい。
自然にやさしいジブリ、現代社会に鋭く問題提起をするジブリ、生と死と愛の本質を語るジブリ、みたいにテーマやメッセージ性を求めるひとには「ジブリらしくなく」見えるのかもしれないけれど、「自然保護」がファッションになり、批判=鋭い意見、繊細な感性だと思い込んでいるひとが多い世界では、もっともらしいことを声を大にして語るよりも、かわいいお魚と男の子の恋をビジネスとして成り立つ娯楽映画にするほうが大変なのではないかとおもいます。
きらい、と言い続けるより、それでもすき、といい続けるほうが、つらいことも多いかもしれないけれど、きっとたのしい。私のことばや写真たちも、それでもすき、と伝えられるものだといいな。写真は1年前くらいのものに撮ったものですが、金魚さん。(暑くて外に出ないのでネタ切れ中)

comment
先日NHKの「プロフェッショナル」という番組で
宮崎駿の1時間半の特集をやっていました。
基本的には子供に向けた映画にもかかわらず
表現に対する徹底したこだわりには驚かされました。
そして最後近くの、あるシーンを生み出すのに
何ヶ月も苦闘したこと、そしてそのシーンこそ
実は宮崎のもっとも思い入れのあるシーンだということを知り、
宮崎アニメの深さに改めて感じ入りました。
宮崎駿の1時間半の特集をやっていました。
基本的には子供に向けた映画にもかかわらず
表現に対する徹底したこだわりには驚かされました。
そして最後近くの、あるシーンを生み出すのに
何ヶ月も苦闘したこと、そしてそのシーンこそ
実は宮崎のもっとも思い入れのあるシーンだということを知り、
宮崎アニメの深さに改めて感じ入りました。
2008/08/09 01:11 | URL | miyabean [ 編集 ]
miyabeanさん、
昨日はありがとうございました。
私も途中からでしたが「プロフェッショナル」、観ました。
私はmiyabeanさんとは逆に、表現に対する徹底したこだわりがあるのに
子どもに楽しんでもらえるものを、という基本スタンスが決してぶれないところに
感銘を受けました。私はトトロをみて大きくなった世代なのですが、
宮崎アニメには大きなギフトをもらったとおもっています。
昨日はありがとうございました。
私も途中からでしたが「プロフェッショナル」、観ました。
私はmiyabeanさんとは逆に、表現に対する徹底したこだわりがあるのに
子どもに楽しんでもらえるものを、という基本スタンスが決してぶれないところに
感銘を受けました。私はトトロをみて大きくなった世代なのですが、
宮崎アニメには大きなギフトをもらったとおもっています。
trackback
trackback_url
http://roverandom.blog52.fc2.com/tb.php/591-91b7c308
http://roverandom.blog52.fc2.com/tb.php/591-91b7c308